役員退職金は相続対策に本当に有効なのでしょうか?
私は中小企業の経営者です。25年前に会社を設立し、現在63歳です。長男が後継者として働いており、7年後をめどに長男に代表を譲る予定で事業承継の計画をしています。最近は相続についても考え始めました。
先日、取引のある金融機関の担当者から、相続対策の一つとして役員退職金の活用とその準備に生命保険を用いる方法について、提案を受けました。個人の流動資産は十分あり、これまでは相続財産を必要以上に増やさないために退職金は不要と考えていました。そのため、役員退職金規程は作成していません。役員退職金が相続対策に有効であれば検討したいと思います。このプランのポイントや注意点を教えてください。
妻、子3人(長男、長女、二女)
- 保険種類:積立利率変動型一時払終身保険
- 一時保険料:2,000万円
- 死亡保険金:契約〜2年間 2,000万円、2年経過後 3,550万円
- @ 会社の余剰資金を生命保険に変えることで、死亡保障を確保できる
- A 万一の死亡退職金と生前に退任した場合の退職金の準備を兼ねることができる
- B 生前に退任した場合には、退職金として生命保険をそのまま支給でき、個人の終身保険としてその後も保障を継続できる
役員退職金は相続対策として有効なケースもありますが、生命保険の活用には注意点も多く、慎重な判断が必要です。会社の状況や保険の加入状況等によって注意点も異なりますので、専門家とよくご相談のうえ慎重にご判断ください。
まずは、役員退職金(※1)と税金の取扱いについて解説します。
役員退職金は在任期間中の功労として税務上一定範囲まで損金算入が認められており、役員退職金規程があれば、それを基準に、規程がない場合は、一般的に「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」で算出される額や同業他社の水準、職位などを参考にして損金算入限度額が算出されます。なお従業員の退職金と異なり、支払額は会社の株主総会により決定されます。
生前に本人が受け取る退職金は退職所得として扱われますが、死亡による退職金は本来亡くなった本人が受け取るものを相続又は遺贈により相続人等が取得するものとして、みなし相続財産と扱われ相続税の対象になります。
相続人が受け取る場合、死亡退職金は全額が相続税の対象になるわけではなく、非課税となる金額(非課税限度額)が設けられています。この場合の非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数(※2)」で計算します。
今回のご相談の場合、想定される相続人は4人のため「500万円×4人=2,000万円」は非課税となり、相続人が受け取る場合にはメリットといえます。
(※1)役員退職金の定義
- 受け取る名目にかかわらず実質的に被相続人の退職金等として支給される金品(現物で支給された場合も含む)
- 死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
- 生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
(※2)法定相続人の数
- 法定相続人の数は相続を放棄した人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数
- 法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人まで
役員退職金の準備のために生命保険を活用することについては、メリットだけでなくデメリットもあります。メリットは金融機関から説明されているとおりで、主なデメリットは以下のとおりです。
- 会社の資産を固定することになる
- 解約すると返戻金が払込保険料を下回ることがあり、特に契約から期間が短い時期は元本割れしやすい
- 資産価値が見えづらく、契約が長期にわたることで契約内容を忘れやすい
- 経済情勢や受け取る時期によっては、返戻金や保険金の価値が相対的に目減りする可能性がある
個人の生命保険加入状況によっては、保険契約をそのまま個人へ引き渡す“現物支給”により終身保険を継続する必要性が低い場合もあり、今回、金融機関から説明されたメリットがすべての人にあてはまるわけではありません。会社を経営している方は、想定される財産総額や保険の加入状況を確認し、会社の財務状況、不測事態へのリスク管理を熟慮のうえ、専門家に相談しながら検討されることをお勧めします。
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